ホタルの生息地づくりワークショップ
 都会では見ることも体験することもできない自然が、習志野市
(千葉県)にはまだ残っています。特に実籾本郷地区には、水田
も含め豊かな自然がたくさんあります。

 夏にはホタル(ヘイケボタル)を見ることもできました。ところが
平成14年からはその姿を確認することが出来なくなってしまい
ました。原因はいろいろ考えられますが、周辺環境の都市化に
よる影響が大きいと思います。
 そこで習志野市では自生していたホタルを復活させるために、
実籾本郷公園内水路で「ホタルの生息地づくり」のワークショップ
を住民参加で行う事になりました。

 建築家として環境保全にも関心を持っていましたので、ワーク
ショップに参加してホタルが再び飛ぶ環境づくりを行っています。

実籾本郷公園(千葉県習志野市)
今回は、
ワークショップ形式(みんなでアイデアを出し合い意志決定をす
る集まり。自由に意見を出し合い参加者の合意形成を重視する
会議の形態)を取っているため、ファシリテーター(中立的立場
から会議の進行役を努める人。参加者が適切な判断が出来る
ように、正確な情報や技術の提供。自由な意見交換のできる場
づくり。合理的に進行させるためのプログラムづくりなどが求めら
れます)と呼ばれる人が、進行役として入っています。

 まず始めに、参加者全員が「ホタルの生息地づくり」に共通の
イメージを持てるように、他のホタル生息地の見学や、専門家を
招いての学習会を行いました。

 参加者全員がイメージを共有出来たところで、いよいよ生息地
づくりの作業に入りました。
(平成16年5月23日)・・・ホタルの生息地となる、実籾本郷公
                園内水路の清掃を行い、水性植物や
                ホタルの餌になるサカマキガイ・ヒメモ
                ノアラガイ・タニシ・カワニナを放し、餌
                として繁殖できるかを観察することに
                しました。

実籾本郷公園内水路の清掃
(平成16年6月20日)・・・前回に引き続き水路内の汚泥をすくい
                水がスムーズに流れるようにしました。
                今回も、ホタルの餌となるカワニナや
                タニシを放しました。
                「ホタルの生息地づくり」のワークショップ
                を、みんなに知って貰おうと言うことから
                看板(右の写真)を立て、同時にワーク
                ショップへの参加も呼びかけました。



(平成16年7月25日)・・・日陰を作るために柳を植える予定でし
                たが、猛暑のため移植してもすぐ枯れ
                てしまうので、今回は湿地帯造りを行い
                ましたが、あまりの暑さに作業もはかど
                りませんでした。






(平成16年9月12日)・・・前回まで造った湿地にメダカがたくさん
                泳いでいました。
                7月に植えたセリやクレソンはなくなって
                いるのもありましたが、根付いているのも
                ありました。
                 今回は、湿地帯をさらに広げることと、
                水路の底にある石をどけて、湿地で掘り
                起こした土を敷きました。



(平成16年10月24日)・・・造った水路及び湿地にアオミドロが多
                 く発生していたので対策として、循環水
                 の流量を少なくして様子を見ることにし
                 ました。
                  湿地に日陰になる所がないので、シロ
                 シキブなどを西日を遮る位置に植えまし
                 た。



(平成16年11月7日)・・・前回放流したカワニナが動き回っている
                 様子が、湿地についている跡で分かりま
                 した。つまり、ホタルの餌が生息できる環
                 境がつくられたことの証明でもあります。

                 約6ヶ月かけてホタルの生息環境づくりを
                 おこなってきましたが、今回ヘイケボタル
                 の幼虫を放流することができました。
                 右図の写真は、来年の夏に飛び交うホタ
                 ルを念じつつ放流する、ワークショップ参
                 加の人達です。
(平成16年12月12日)・・前回に引き続き、放流した巻貝が動き
                回っている跡を湿地帯の中で確認する
                ことができました。
                 今回は、ホタルの天敵ザリガニの捕獲と
                日陰の場所を増やすためにヤナギとハン
                ノキの植栽、アオミドロの除去などの作業
                を行いました。
                 新たな参加者として、千葉大教育学部
                の学生と、実花小学校の子ども達が先生
                と共に参加してくれました。
                 毎回約12名の参加者での活動も今年
                はこれで終了しましたが、また来年1年間、
                活動する予定ですので興味のある方は、
                ご参加ください。

(平成17年4月24日)・・今年に入り、2月・3月は昨年の活動を振
               り返り今年度の活動の修正を行いました。
                当初の計画では田んぼをつくる予定はあり
               ませんでしたが、実験的にミニ田んぼをつく
               って見ようと言うことになり、今日苗を植えま
               した。
                このワークショップが、実籾本郷公園内で
               行っているので、公園に来た人たちに活動
               内容をお知らせする看板を作り同時に活動
               参加を呼びかけています。




次回は平成17年5月22日(日)AM9:30からです。
場所は実籾本郷公園ですので、近くの方はご参加下さい。
参加希望の方は
HZP01060@nifty.comに連絡してもらえれば、詳しい内容を
説明致します。



 実籾郷の会(みもみさとのかい)

「実籾郷の会」in習志野

 住環境は市街地だけでは成り立たず、農村などの自然環境と
一体になってはじめて快適な生活が送れます。しかし高度成長
期にむやみやたらな開発の為、環境が破壊され人々の生活や
健康を脅かすに至り、初めて自然環境の大切さに気付き始めま
した。
 一方1995年の阪神淡路大震災でみられたように、大災害を
前に行政は被災者の切実な要望にこたえられる機動性も人員
もノウハウも持っていませんでした。
 これに対して、被災者への救護物資の輸送や配分、避難所の
運営、仮設住宅への引っ越し手伝い等、身軽にきめ細かく活動
したのは、延べ百万人を超えるNPO(非営利組織)の人たちで
でした。
 大規模な災害だけではなく、価値観が多様化し社会の変化
が早い現在、ますます行政や大企業では対応出来ない課題が
増えてきています。

 その様な中、各地で環境に対しても住民みずから自然保護
活動を起こす例が増えてきました。この「実籾郷の会」も平成
6年に地元農家の人たち数名で始めた行動でありましたが、
今では会員数217名(平成16年 1月現在)を有するまでにな
っています。

 1727年に建てられた(旧鴇田家住宅)
 習志野市は、人口153,819人、面積20.99kuの人口密度の
高い都市である。にんじんは国の野菜指定産地になっていて、
市の特産品のひとつでもあります。田畑や水田は農家の後継
者不足から減る一方です。このままでは、豊かな自然が消え
てしまうという農家の人の危機感から、この活動はスタートして
います。
 最初から「実籾郷の会」の組織にできたのではなく、初めは
水田を復活させ、森と畑と一体の自然循環形態を維持させよ
うとしました。そして活動資金確保として、県の補助金交付を受
けつつ、会員はボランティア活動として続けました。県の補助金
も毎年交付されるわけではなく、最初の2年間(15万円/年)の
みでした。

    (旧鴇田家住宅)内部・木組み
 そこで水田に、もち米と古代米(黒米)を植え、その収穫の売
り上げを活動資金に当てることにしました。古代米は健康食品
ブームもあり好評でした。
 同時に、その米づくりの過程に子供たちに参加してもらおうと、
田植え、草取り、稲刈り、もちつき大会を企画し、会員(年会費
500円)を募集したのでした。
 会員募集に先立ち、会の重点項目として、    
  1,公園及びその周辺の自然環境の保持、発展を図る。
  2,実籾地域に残る伝統行事の保持、伝承。
  3,ホタル他、水性動植物の保全を図り、青少年の自然
    体験の場とする。

 の3点を掲げ、事業計画として、
    @米作り(田植え、草取り、稲刈り、)
    A公園清掃(毎月1回)
    Bメダカの放流
    C学習会
    D収穫祭
などの行事を行っています。

 収穫祭でのもちつき
撮影:(有)写真の泰成 奥山直章
「実籾郷の会」としての活動は今年(平成16年)で6年目を向か
えますが、会員は毎年増えているし活動の領域も子ども達を対象
に行っている自然体験学習など、広がってきています。
その理由として考えられることは、

    1.豊かな自然を守ろうとする共通の認識を会員で共有
      していること。
    2.参加者はスタート時点より、ボランティア活動と理解し
      ているため、内部で利害関係が生じにくい。
    3.活動内容が地元密着型で、大きなことはやっていない。
    4.参加者が多様な分野にまたがっている(地元農家、自
      営業、サラリーマン、市議、主婦、定年を迎えた人、
      子ども達)こと。
    5.会の活動資金が確保(作った米の売り上げ・公園清掃
      の委託事業費)されていることと、収入が全て会員に
      還元されていること。

 このことにより、この実籾地域の環境保全が保たれ、そこに参
加される地域の人達が誇りを持てる活動が生まれています。

 今後の課題としては、この活動を持続して行くための人材・資金
運営能力を如何に確保するかです。